青空が続いています。最近は朝晩とても涼しく、秋の気配を感じています。現場での作業も体力的に楽になり、順調に進んでいます。
今回の家に限った事ではないですが、木組みの要!接合部について少し紹介します。
木の太さや年輪の密度、乾燥状態など構造的に押えておかなくてはいけない事は多々有りますが、木と木の接合をどうするか?ここも重要な部分です。
”継手”という言葉は耳にしたことがあると思いますが、継手とは、長さ方向につなぐ事で、直角につなぐ事を”仕口”と言います。たとえば、土台と柱の接合部などが仕口にあたります。
継手の方法としても様々有り、現在では、継手金物も様々あります。
高い継手強度を持たせるために、金物を使う事も有りますが、木と木を伝統的な仕組みでつなぐ方法もいろいろ有り、出来るだけ木だけで組める継手を選んで設計しています。
写真は、登り梁の継手です。追っ掛け大栓と呼ばれる継手で、木と木が握手したように組まれていて、離れないように込み栓と呼ばれる樫の木で止めてあります。
梁や登り梁などは、ほとんどこの追っ掛け大栓で造ります。強度があり信頼できる継手ですが、材料の長さが必要で、大工の手間もかかりますが、上手く行ったときは気持ちよいものです。
継手に変わり、仕口の紹介です。
実は、継手に比べて、仕口の方法は様々で、木と木と直角につなぐ訳ですから難しい部分です。やはり金物でとめつけていく方法が有りますが、これも出来るだけ木と木で行いたいと考えています。

土台と柱の仕口です。柱のホゾと呼ばれる部分が土台に差し込まれ、樫の込み栓で止められています。実験などでは、この状態で、10KN(約1トン)くらいの引き抜きに耐える事が出来ます。

写真は込み栓です。角と丸を使い分けています。
高い強度が必要な部分には、基礎からボルトを出して柱に固定する金物を使っています。

鬼に金棒と呼ばれる接合金物で、25KN(約2.5トン)の引き抜きに耐えます。
そのほかの仕口として

柱に梁が2方向から刺さる場所には、雇い実と呼ばれる板を通して、込み栓で止めたり、

同じ部位で柱の断面欠損を少なくしたいときは、鬼金(鬼に金棒)とDボルトと呼ばれる金物を併用して強度を増しています。

通し柱のような角柱には、柱にホゾを差込み込み栓で止めています。これも同上に、柱の断面欠損を考えて、Dボルトで止めたりすることもあります。

今回の家の特徴です。棟木が3間(5.46m)飛んでいるので、方杖を用いて材の垂れを防止しています。方杖に流れてきた力は柱に掛かる為、柱の太さを増して、さらに断面欠損の少ない仕口を選びました。
全ての接合部を木だけでと望まれる方もいますが、現代の基準で、2階建ての建物となるとなかなか難しく、強度の高い金物を使う場所もあります。
がしかし、金物を使う場合、その使い方が問題だと思います。単にビスや釘で打ったようなものは、木の割れを促進させたり、また、ひとつの柱に色々な金物が取り付き、もはや個々の強度を期待できない事もあります。
基本的に、金物は材料の真ん中で引っ張るようなタイプが望ましく、また、空気にさらされている事も大切だと思います。金物は金属なので冬場には冷たくなり結露します。その結露水が乾けば良いですが、壁の内部に隠れてジメジメしていると木を腐らせる原因になります。
金物も、思い切って室内に現す事とし、その際、その金物のデザインも大切ですね!
木の特徴、金物の特徴を良く理解し、適材適所に使い分けていくことがもっとも大切だと思います。
最後に、建物の中で接合部と呼ばれる部分はとてもたくさんあります。その一つ一つに適した方法を選んでいくわけですが、設計段階で取り合いを考え、トータルな仕組みを図面に指示していくことが重要だと思います。一般的に、接合の方法を大工さんに任せる人もいますが、きっちり検討した上で大工とさらに協議していかないと良い接合部は造れません!
何事も、事前の計画が大切ですね。
長くなりましたが、今回の現場見学会では、その点もじっくりと見ていただき、遠慮なく聞いてください。私なりの工夫も合せて、ご説明させてもらいます。